帰宅したばかりの末弟の翔太は、十郎の連れる『おひきずりさん』を見て、思わず学生鞄を落とした。
十郎も気まずくなって、溜め息を吐いた。
「……何なの、あの女は」
翔太は、彼女が着付けを直しに行っている間、十郎に訊いた。
「僕の恋人……候補。一応ね。
とりあえず、翔太。……彼女を、どう思う?」
「どうもこうも……はしたなすぎる」
「……やっぱりね」
十郎は、分かりきったように、また溜め息を吐いた。
「……兄さん、ああいうのが好みなのか」
「いや、そういうわけでもないよ。ただ……体は抜群なんだけどなぁ……」
その先、翔太は黙っていたが、十郎がなすべき事は、もうきちんと決まっていた。
「翔太。父さん達には、今日の事は内緒の方向で……」
「そんな事、言われなくても分かってる」



