“俺様”大家の王国




屋敷に着くと、彼女はあんぐりと口を大きく開けて、屋敷のあちこちを見回していた。

彼女は、いわゆるキャバ嬢で、頭も育ちも良くなさそうだった。

「すっご~い! ひろーい! ふるーい! でっかいお屋敷~!」


大声で、彼女は歓声を上げた。

聞き慣れたはずのその声は、どうしてだか屋敷で聞くと、品無く感じてしまった。

通りかかった女中達が、目を剥いて言葉を失っていたのが印象的だった。


十郎はすぐに彼女を部屋に通し、待機していた女中達に任せて、彼女に着物を着せた。

程なくして、十郎が待つ隣室まで、


「苦しい!」

「動きづらい!」

という文句ばかりで大騒ぎの悲鳴が聞こえてきた。


十郎は後から女中達に、「あんなにも暴れる人にお支度をしたのは初めてです」と言われた。


着付けを終えた彼女は、それなりに整えられた様子で、

まあこれならいいだろうと思っていた十郎だったが、着物に慣れない彼女の動作は滑稽だった。


その上、屋敷の中を少し散歩しただけで、彼女の姿は無残なまでに着崩れてしまっていた。