十郎は、どっしりと構えるように座った祖父を、見つめた。
羽織袴を身に付けた祖父は、決して恰幅が良い方ではない。
それどころか、年々痩せていく。
それなのに、彼の体から滲み出るこの威圧感は、何なのだろう。
「――自分と結婚する人を、自分で探したいというのは、……理由になりませんか?」
十郎の頬を、汗が流れた。空調は適温のはずなのに、変に汗が出た。
彼は以前、この屋敷に当時付き合っていた女性を連れて来て、失敗した事があったのだ。
もちろん本気で結婚するつもりの女性ではなかった。
ただの気まぐれで、彼女を招いたのだった。
その時、末弟の翔太が家にいたが、祖父や父には会わなかった。
「ミニスカは……さすがに駄目だよ」
十郎は、彼女の家まで迎えに行って、玄関から『おまたせ』と飛び出して来た女性を見て、言った。
しかし、彼女はこれ以上長いスカートは持っていないと答えた。
ならズボンに着替えて欲しいな、と思ったが、
実家に着いてから着物に着替えて貰えばいいかと思い直し、彼女を車に乗せた。



