“俺様”大家の王国




十郎は、澄ました顔で言った。

この席で一番若いのは彼だったが、十郎は怯える様子も無く、気圧される事もなく、あくまでも落ち着いていた。


「屁理屈を……!」


「そういえば、俊夫叔父さま……今日、奥さまはどうなさったんですか? 

ここにはいらっしゃらないようですが……」
 

叔父――俊夫は、はっと息をのんだ。


一族の会議には、原則的に夫婦で出席するのが習わしだった。

しかし、会議に彼の妻の姿は無い。


「……ご病気でしょうか?」
 

十郎は、嘲笑うように言った。


「……ああ、そうだ」


 
俊夫は目線を泳がせ、短く答えた。


しかし、十郎は更に追い討ちをかける。


「……最近、別居なさったそうですね。

聞けば、奥さまには愛人もいらっしゃるとか……」
 


一同がざわつく。


俊夫は羞恥と憤怒に顔を赤らめ、大声を出した。