そして、この時もそうだった。
「――はあ。嫁を……?」
十郎は、祖父や父親をはじめとする居佐間の一族が、
正装してずらりと並んで座る中に、向かい合って正座して話を聞いていた。
彼等は、十郎の身を固めさせようと、それぞれに見合いの話を持ってきたのだった。
しかし、居佐間は大きなグループで、系列会社の数も分野も様々だった。
しかし、居佐間の名前で作れないものはないほど、社会への影響力は大きい。
つまり、やがてはそのグループを継ぐ十郎の花嫁を決めるという事は、
具合によっては経済の流れを大きく変える事になるのだった。
だからここには、のほほんとした和やかなムードなど微塵も無く、
ただひたすらに重苦しく、高圧的な空気で満たされていた。
照明は点いているはずなのに、ほんのりと薄暗い。



