「た、例えばテレビの中で、人なんかが屋上やらベランダやらから落っこちそうになったところで、

正直あまり怖いとは思わないんですよ。

だって、仮にそれが事故や事件でノンフィクションだろうが、

似たような光景は常にフィクションで見られるんですから。

でも、動物は違うでしょ? 


明らかにガチじゃないですか。

それにきっと何も考えてないから、もっと危ない事しそうじゃないですか。

小さいし柔らかそうだし、落ちたらもう取り返しが付かない事になりそうじゃないですか」


「要するに十郎さんは、私の事を野良猫か何かだと思ってるんですね……?」


「いや、あの……そういうわけじゃ……!」


「別に構いませんよ。私、猫好きですし」


「そうじゃなくて僕は、奈央さんが……!」
 



その瞬間。
 


『何か』を察知した私は、反射的に十郎さんの口に、持っていたチョコバナナを突っ込んでしまった。