「あの、奈央さんが追いかけられた話ですけど……」
「ああ、それなんですけど……あの人、私にこう言ったんですよ。
『お母さんが探してる』とか何とかって……。
それなんで、咄嗟に逃げました。あー怖かったー」
「……? どういう事だ、それ……」
突然敬語じゃなくなったので、独り言なんだろうと思い黙っていると、十郎さんは、
「ああ、そういう事か……」
と、自己解決したようだった。
「どういう事なんですか?」
肉まんを食べ終え、チョコバナナのフィルムを破りつつ、尋ねた。
「どういう理由でかが分かりませんが、きっとお母さまはうちの弟に、
奈央さんを探すよう依頼したんですよ。
何せ、探偵が駄目になったわけですから……」
「え、探偵もう来ないんですか?
何でそんなはっきりと分か……」
「ゴホンゴホン。
それはまぁ、いいとして……」
彼は、やたらわざとらしく誤魔化してきたが、
どうせ問い詰めてもまたはぐらかされるんだろうなぁと思ったので、訊かなかった。



