“俺様”大家の王国




彼は、握手を求めるように手を差し出して来た。


「……お母さん――綾子さんが、君を探してるよ。

俺と一緒に、来てくれないかな」
 

私は、じりっと後ずさりをしていた。
 
心臓が、変な鳴り方をする。
 
どうして、どうして、あなたが私を知っているの……!
 
母さんが私を探している? 

探偵だけじゃなかったの?
 


彼の手を取ってしまったら、私はきっと逃げられない。

この手は、そういう手だと分かった。


嫌だ、見付かりたくない……!


「い、いや……」
 
私は、触れかけた彼の手を振り払い、一目散に駆け出した。

取り残された佐和の、「な、なんなのー!」という悲鳴じみた声がやけに大きく聞こえる。


だけど、私は止まらない。