「……えっと、一応……弟なんだけど」
 

色付きの伊達眼鏡をずらしながら光太郎が呟くと、ミエロは部屋の方を向き、十郎を呼んだ。

十郎はすぐに来た。


「コータ、お前……」
 
十郎は何故か光太郎の顔を見るなり、台所へくるりと引き返し、小さな瓶を持って戻ってきた。


「コータ、お前何しに来たんだ!」
 

ぱっぱっぱっぱっ!


「ぐわっ……しょっぱ! いきなり何まいてんだよ兄貴!」


小瓶の正体は、食卓塩だった。

「うるさい! 

ここへは来るなって言ったのに、お前はあっさり約束破って! 

電車代やるからさっさと帰れ!」


「ストップストップ! 訳を話すから、塩まくのやめてってば! 

目に入るッ……!」