加藤真二は最近、実験で同じ班の緒方さんの様子がおかしいな、と思っていた。

意味もなくボーッとしていたり、小さな失敗を繰り返したり。

一昨日なんて、お茶を飲もうとして、ボトルに口が触れる前に手を傾けて、ばたばた中身をこぼして悲鳴を上げていた。

もっと前は、廊下を歩いていた時に角を曲がり切れず、壁に顔を半分ぶつけていた。

先週の薬品を使った実験では、危険な濃塩酸を、口を使うホールピペットという器具で量りかけて、ギャーと言っていた。(気化した塩酸で口の中が荒れなかっただろうか……)


今日だってそうだ。

去年は意地でもメスなんて握らなかったくせに、

「詳細に記録を取るからね!」と手袋に血の一滴も付けなかったくせに、

どういう心境の変化だか、今回はラットの解剖を買って出た。



しかも、勢いに流されて、屠殺から……。