格好良く相手を切り捨てる、決め台詞的な去り際の一言も思い浮かばず、ただ夢中で逃げ出した。


逃げ込んだ部屋の鍵を締めて、閉じこもって、朝になったらすぐ、物音を立てないように支度して、



今度は、学校に逃げて。




所詮、私なんてそんな程度だったんだ。


信じていたほど、強くなんてなかった。



私は結局、こうして一日中物思いにふけり、古い記憶までほじくり返したものの、


肝心の『十郎さんの気持ち』というものに、全く焦点を当てていなかったのだった。





その事を後悔するのは、もうしばらく後の事だった……。