「『一応』とかまどろっこしい事言ってんじゃないわよ。

私が『頼んだ』っつってんだから、素直に引き受けるって言えばいいじゃない」

(こんのババアー!)

「……娘さんの名前は?」

「緒方奈央……」
 
彼女はそれだけ言うと、さっさと部屋から出て行ってしまった。
 
ぽつんと残された俺は、どこかでその名前を知っている気がして、

しばらく記憶を手繰っていた。
 
そして、思い出した。

「……会った事あるじゃん……」
 

兄貴の部屋で寝てた子じゃん……。