十郎さんは、いつも頼みごとをするような調子で、私に微笑みかけた。
問題なのは、彼の格好と体勢だ。
「……降りて下さい」
「そうしたいのは山々なんですけど、
腕が奈央さんの下敷きになってて、どこうにも……」
「いいから降りて下さい! もう離れて! 殴りますよ!」
「うわ、ちょっと暴れないで下さい……!」
「わざとですか!? これ、わざとですね!? 嫌あああああっ!」
「わざとじゃないです」
「じゃあ何でそんなに冷静なんですか!」
「えっ……言ってもいいんですか?」
ふと、十郎さんが真顔で言うので、ぞくりと怖くなる。
「じゅ……十郎さんの馬鹿あーっ!」
とうとう私は……本気で泣き出してしまった。



