“俺様”大家の王国




「わ――っ!」
 
十郎さんは、いきなりぶっ倒れた。

受け止める間も無く、床に打ち付けたであろう頭の音が、痛そうに『ゴン』と響く。

「どうしたんですか、十郎さん! ……うわ、熱っ!」
 
咄嗟に触れた彼の額は、明らかに熱を持っていた。

念の為に首筋にも触れてみる。……やっぱり熱い。

「十郎さん、もしかして風邪引いてるんじゃないですか……?」

「えへへ、そうかもしれませんね。頭が痛いです」

「ぶつけたところがですか?」

「ぶつけてないところもです。鼻もつまってます」

「喉もですね。

声がちょっと変だし……完全に風邪じゃないですか」