かし、彼の表情は真剣そのものだった。
目は血走ってるし、顔を逸らしたくなるほど何か近いし……。
というか、『力強い』を通り越して、もう手は痛いし……。
「えっと、特にありません。
あの……痛いです、放して下さい……」
でも……何故か、彼は呆けたように固まったまま、
手を放してくれようとはしなかった。
「あの、放して下さい、十郎さん!」
名前を呼んだ瞬間、彼の力が緩んだ。
ほとんど振り払うようにして、やっと解放される。
「……一体、何なんですか?」
だが、その問いに対し彼は、
「何でもありません……」
咄嗟に出てしまった言葉なのだろうが、急に悲しくなってきた。



