叫んだ瞬間、教室がしんと静まり返った。
(わーっ、何で皆いきなり黙るの!?)
「……あー、もしかして、奈央HIKARU好きなの?」
「いやね、そうじゃなくて、ていうか絶対違うんだけどね、
うん……何でもないよ」
「何でもないのにあんなに否定したの?
……おっかしーの。やべっ先生来た!」
佐和の言葉通り前の引き戸から、
よぼよぼのおじいちゃん先生が、ほてほて現れた。
「……おはようございます、皆さん。
この教室は静かでいいですねえ……静かといえば、
先日僕は授業中にお腹が鳴ってしまいましてね、
あの時も静かだったもんで、とっても恥ずかしい思いをしてしまいました」
突然の先生のカミングアウトに、教室は一瞬で笑いに包まれた。
ああ、よかった。
これで誰も、さっきの事は覚えてない。
不意に、佐和の言葉が蘇る。
『この原作って……』
(……まったく、冗談じゃない)
母は私を、一体どうしたかったんだろう……?



