岩井、と呼ばれた男は深い溜め息を吐きながら、
芝居がかった口調で言った。
「……えー、あるところに、一人の女の子がいました。
彼女は、ある人から『オガタ』と呼ばれ、
また別の人からは『ナオ』と呼ばれていました。
……さて、これの意味するところは、何でしょう?」
青年は、うどんをつゆに浸しながら、首を傾げた。
岩井は、泣きたくなった。
「あのなあ……」
「あ、すいません。
この天ざるうどんって、ちょっと高いんでしたっけ。
経費で落とそうとしたのばれました?
岩井さん所長に気を遣って、
一番安いざる蕎麦頼んだのに俺ばっかり……」



