そして私はといえば、ずっと心中で運転手を呪っていた。 (……おじさんの馬鹿……タコ……でべそ……うんこたれ……) 事故ですよー! たった今ここで事故が起こりましたよー! 謝罪と賠償金を請求します! (……ほっぺならまだしも) 今までの人生で、唇が直接触れたものなんて、 食器とリコーダーと歯ブラシくらいだよ……。 人っぽいものだって、ガーゼ越しの人工呼吸用ゴム人形くらいだよ……。 (――それが!) 何だって、こんな……。