(事故だ……) ぶつかった。 ……口が! 口と! すぐに離れたものの、後ろがドアで逃げ道の無かった私にとって、 運が悪かったとしか思えない。 しかもしっかり状況を理解していたくせに、 頭がそれを認めるまでに、少し時間がかかった。 十郎さんも、びっくりした顔をしている。 しかしこの場合、私が謝るべきなのか、 彼が謝るべきなのか、よく分からずお互い顔を逸らしたまま、 とにかく電車が停まるのを待った。