この状況を、早くどうにかして欲しい。 行き過ぎた彼の好意に、私はもうギブアップだ。 「じゅ、十郎さん……あの、もういいですから……」 小さな声で、やっとそれだけ言うと、彼は微かに頷いた。 何だ、最初からこうすればよかったのかと、 私がほっと一息吐いて、彼が手の力を緩めた……。 ――瞬間に、電車が揺れた。 乗客達が、一時的にバランスを崩し、 その結果何が起こったかというと……。