へらへら笑った途端、電車が揺れた。 ドアと乗客に挟まれて、苦しいを通り越して痛い。 ギヒャー! 「……大丈夫じゃないようですね」 ふと、十郎さんは私から手を放すと、ドアに両手を突いた。 私の頭の両横にいきなりだったので、何事だ、と焦る。 だけどそれはすぐに、 私と彼との間にスペースを作るものだと分かった。 手に力を込めて、背中側の乗客を押し戻しているのだ。 (そ、そこまでしなくても……!)