そしてあっという間に、反対側のドアまで押しやられる。 (うぐぐぐ……) 誰にも、悪意は無い。 皆、ただ電車に乗りたいだけだ。 だけど、……体中ぐいぐいみぎみぎ押されて、苦しい。 鞄が腹に食い込む……。 「……大丈夫ですか、奈央さん」 十郎さんが、私にしか聞こえないくらいの声で心配してくれた。 離れないように、いつの間にか手を繋いでいた。 ……体が密着している。 「だ、大丈夫です……慣れてないから、 びっくりしただけですよ」