風が強い。 雲がどんどん流されて、太陽が隠されて、 また姿を現してを繰り返す。 私は手摺りに凭れかかって、ほっと安心する。 (ここなら……誰にも見付からない……誰も来ない……) しかし、背後で扉が開く。 誰なのかは振り向かなくても分かっていた。 (探したわよ、奈央……) 私は声の主に抗うように、 そのまま手摺を飛び越えた――。