「母が探偵まで雇ったとあっては……もうお終いです。 近いうち、必ず私を探し出すでしょうから……」 あるいはもう、母はドアの外まで来ているかも知れない。 不意にそんな恐怖が、私を襲う。 しかし、十郎さんは違った。 何かを考えるように手を口元に当て、それが纏まったのか、 しばらくしてから急に私の手を握って言った。 「なら、もう一度逃げましょう。 今度は絶対、見付かりません。 僕が協力します」 真剣な表情だった。