だけど、どれだけ主張しようと、母の気は変わらなかった。
 
どうして分かってくれないんだろう。

どうして私の言う事を聞いてくれないんだろう。

私は、半ば絶望するような気持ちで、家を出た。

「それで……約束の日が決められて、

その日までに急いで引っ越したんです。

ここで我慢したら、一生母に逆らえなくなると思って……」
 
だからこれは、一種の賭だった。
 
母が、私の覚悟を汲み取って、追わずにいてくれたら、私の勝ち。

唯一にして最大の抵抗は、実を結んだ事になる。
 

しかし、母は私を諦めていなかった。

私は賭に負けたのだ。