“俺様”大家の王国




例によって、私が十郎さんの部屋で夕飯を作っていた時。
 
初めて見る顔が、勝手にドアを開けた。

「こんばん……あ、新しい入居者!」
 
部屋中に突き抜けるような野太い声に、

心臓が引っ繰り返るかと思った。
 
隣にいた十郎さんが、

「こんばんは、ヨシ」
 
と彼を出迎える。
 
私は、『ヨシ』と呼ばれた男の顔を見るのに、

かなり上を向かなければならなかった。

(すごい身長……二メートル近くありそう)