実際、楽だった。
『奈央』に、会った事が無いからだ。
だから相手からしても、それほど嘘に見えないようだった。
探偵は、言葉を変えて尋ね直したが、
それに対しても久我は、知りませんねえと、答えた。
「二階の端の部屋に、入居者があったと思うのですが……」
「二階の端ですか?
うーん、あそこはずっと空部屋なんですけどね……
普段は日中、仕事でいないんで、詳しくは分かんないです。
誰か、探してるんですか?」
「それはその……プライバシーに関わる事ですので」
探偵は、ご協力ありがとうございました、
なんて台本通りのセリフを言うと、頭を下げて消えてしまった。



