「今、スランプだからでしょう。

普段は、もっときっちりやってくれてるんですよ。

彼は、完璧主義者ですからね」

「そうなんですか?」
 
私は、スープを温めながらお玉を動かした。

薄切りにした椎茸と玉ねぎが、卵と一緒に泳ぐ。

「ああ、確かにそんな事言ってたような……」
 
ドアを開けた時、こちらがびっくりするほど、

彼は何かを怖がっていた。

とんちんかんな事を口走ってはいたけど。