生粋の日本人である彼の名前を、 最初に読み間違えたのは十郎さんだった。 「……ミエロ・敬? おや、外国の方ですか? それともハーフ?」 「それ、『江口』っていうんですけど……」 ミエロこと『江口敬』さんは、物凄い悪筆だったらしく、 書類にしたためられた字は惨憺たる有様だったらしい。 文字のバランスが取られていないどころの話ではなく、 時にはカタカナと漢字の判別がつかなかったほどだったという。