「焦ったよ。淋しそうな顔はしてくれるのに、たった一言、分かった。って言われてさぁ。あぁ、俺ってやっぱ、好かれてなかったのかな・・・。ってさ」


 そう言って壮太君はにっこり笑うけど、その顔はとても切なそうな、寂しそうなものだった。


 あたしが、こんな顔をさせてしまってるんだ。


 そう思ったら、心臓が、針で刺されたように痛くて、急に萎縮する感覚に陥った。



「自分から終わらせたくせに、やっぱ嫌でさ。もう一回、佐智と一緒に居たくて。でも、今度はちゃんと好きになってもらってじゃないと、俺、また同じ事しそうだから・・・・・」



 でも、壮太君、何も言ってくれなかったじゃないか。


 そう言おうと口を開いたら、壮太君にキスされて、言う事は出来なかった。




「でもさ。いざ、好きって言われると、何も出来なくなるんだね」


「え?」


「佐智が好きって言ってくれた時、俺すっげー嬉しくて、嬉し過ぎて、何があったのか解んなくなって。そしたら佐智、俺に謝ってて」


「だって、何も言ってくれないから・・・」



 既に乾いていたはずの涙が、あの時の事を思い出して再び溢れ出てきた。



「泣かないでよ。ホント、ごめん。嬉しくてトリップしてたんだ」


「で、でも、じゃあ、すぐ連絡くれれば良かったのに」



 泣きながら言うあたしの涙を、壮太君は最初と同じように拭いてくれる。



「夢、見てるのかと思ったんだ。しばらく、信じられなくて。だから、返事するのにこんなに時間がかかった。ごめんね、悲しませて。泣かせちゃって」



 そう言い、壮太君はあたしを再び抱きしめた。


 今度はあたしも抱きしめ返す。


 抱きしめ返したら「佐智、大好き」って、キスされた。


 さっきから何回もされてるけど。


 そのどれとも違う、長い、キスだった。