「俺との時間は、気が向いたときだけなんじゃねーのとか思ったりしちゃって。で、俺って何?って考えて、よく落ち込んでた」


 バカでしょ?


 そう言って壮太君は苦しそうに笑う。



 その顔を見たら、「ごめん。そうな風に思ってるなんて、知らなかった・・・」って、言うのが精一杯で。


 なんて言ったらいいのか、解らない。


 そんなあたしに壮太君は「俺も言わなかったから、伝わるわけないんだ」と、「だから謝らなくていいよ」って、言ってくれる。



 優しい優しい壮太君。


 今でこそ本当に好きって気付いたけれど。


 数週間前、壮太君と付き合ってた時はちゃんと考えた事もなかったから、そんなこと、気づきもしなかった。


 ごめんね。


 壮太君。


 あたしはずい分貴方を傷つけてしまったね。



 けれど。



 それでも知っていて欲しいのは、そんなあたしなりに当時も壮太君のことは大切に思ってたって事。




 それを伝えると優しい顔で「知ってるよ」って言ってくれた。




「佐智ってさ、色んな事に無頓着なのに携帯の着信、俺のは変えてくれてたでしょ?ストラップだって俺があげたお揃いのやつ、ちゃんと着けててくれてたし」



 嬉しそうに話す壮太君を見ていると、なんだか恥ずかしくなってくる。



「待ち受けだって、俺んちの犬だったしね。佐智が、ちゃんと俺を気にしてくれてるって、知ってたよ」


「でも、足りなかったんだね」


「そう、足りなかった。だから、不安だった。男のくせに女々しくて、カッコ悪いけど、自分だけ好き過ぎて、苦しかった。だから、わざと別れようなんて言って、佐智を試すような事、したんだ」



 あたしは何も言えなかった。

 結果的に壮太君を好きって、気付いたけれど。

 当時は壮太君の事を大切には思っていても、それほど重要視していなかった。

 だから、別れを切り出された時も、引き止めもしなかった。

 理由さえ、聞かなかった。

 ただ、「分かった」と、一言言っただけだった。