「ごめん。こんな風に泣かせるつもりなんて無かったんだ」



 あたしを抱きしめる腕の力を強めながら、壮太君はそう言った。


 あたしはただ彼の言葉に耳を傾ける。



「佐智。俺、佐智に嘘ついた」

「え?」



 思わずそう呟く。

 それに壮太君は眉を歪めた。



「女の子と居るのを佐智が知ってるなんて思わなかったって言ったけど、あれ、嘘。ホントは佐智が知ってるって解ってたし、何より佐智に見せる為にやってた」


「な、なんでそんな事・・・・・」


「佐智の気持ちが知りたかったから」


「あたしの気持ち?でも、あたしその前の日に壮太君に振られたじゃないか」




 そのあたしの言葉に、壮太君は苦虫を噛んだみたいな顔をして「それは・・・」って、言葉を続けた。



「佐智が俺の事好きか解んなかったから・・・。試したってゆーか」


「あたし、不安にさせてた?」



 聞くまでもなく絶対不安にさせてたって確信があるのにあえて聞くと、壮太君は「死ぬ程不安だった」と、寂しそうな顔をした。


 そしてまたあたしを抱きしめる力を強める。


 正直、痛いんだけど、なんだかくすぐったい気持になって、痛くてもいいかな。なんて、思ってしまう。



「佐智は、俺にあんま興味無さそうだったから。俺は凄く凄く佐智の事が大好きで」



 力を強めたまま壮太君はまた言葉を落としていく。


「暇さえあれば佐智と一緒に居たいって思ってた」



 なんだか、胸が締め付けられる。


 そんな風に、想っていてくれてたんだね。


 なのに、あたしは。



「でも佐智は俺との時間よりも奈菜さんとか、本を読むことだとか、とにかくそう言った時間の方が大切そうで」


 そう。


 あまりにも自分の時間を大切にし過ぎて、壮太君を、蔑ろにしてしまっていたんだ。


 不安にさせるのは、当り前だった。