少し前に私を買った男がいる。
たったの数万円で私はある男に買われた。


「ねぇ、いい?」


男はそう言うと私をベッドに押し倒す。
別に嫌じゃない。かといって怖くもない。
私もそれを受け入れる覚悟はあるのだから。


「ありがと。」


終わった後に彼はお礼を言うと私の前から姿を消す。
そして着たばかりの服のポケットに手をつっこむと彼の電話番号が書かれているメモが入ってあった。

これは電話をしろと言う事だろうか。
そして私は数日経ってから電話をする事にした。


「あ、また会える?」


電話に出ると男は私の声を聞きすぐにわかった様子でこう言った。
私は別にあの男と会う事が嫌な訳ではない。


「別にいいよ。」


だから男をまた受け入れた。


「わかった。なら、またよろしく。」


その言葉が何を意味するのかぐらいわかっているし、それが当たり前だとも思った。
だって私は男に買われたのだから。


「久しぶり。ならしようか。」


私と会うなり男は早速始めた。
それは当たり前だけど、本当に私とはその目的しかないと改めて言われている様で何だか悲しくなった。

私を買った男にこんな感情を抱くわけにはいかない。
そう思っていても反応する心臓に腹が立った。
でも抑えられない感情は誰にも止める事などできないのだ。

そしてある日、私は男の耳元で呟いた。


「ねぇ、私も貴方を買いたい。」


end