「ごめんね、小野くんとは付き合えない。」


小野くんの失恋現場を見たのは、ほんの1時間前の事。
ゴミ焼却場の前の掃除担当の私は小野くんと、小野くんの好きな人が2人でいるのを見つけてしまったのだ。
そして偶然にも振られている最中だったのだ。

私はいてもたってもいられず思わず逃げ出してしまった。なのでその後の事はわからない。
だけど小野くんが振られたという事は、小野くんは告白したという事だ。
そしてそれと同時に私も小野くんに失恋した事になる。


「まさか、小野くんに好きな人がいたなんて・・・。」


小野くんの失恋現場を思い出し1人裏庭で落ち込む私。
もうこのまま世界が終ってしまってもいいかも。そう思う程、私には大きな事だった。


「あ、石田。そんなとこで何してるの?」


ふと聞こえた声は紛れもなく小野くんの声で私の心臓は大きな音をたてた。


「小野くん!ちょっと、日光を浴びていて・・・。」


アホみたいな言い訳をして私はすぐに後悔をした。
でも小野くんは変な顔なんかせずに「そっか。」と呟くだけだった。
心なしか小野くんの顔が悲しそうに見える。

やっぱり落ち込んでいるよね。
好きな人に振られるって事は凄く悲しい事だもん。


「俺もここで日光浴びようかな。」

「え?!」


突然隣に寝転んできた小野くんに私の心臓は再び大きな音を立てた。
脈なんか全然ないのにやっぱりまだ意識してしまう。


「小野くん、好き・・・。」


口から出た言葉に自分でも驚いた。
無意識の内に私ったら何で告白なんてしてるの?
もう失恋は決定しているのに。


「俺、石田を好きになればよかったかも。」

「・・・え?」


その後、急に塞がれた唇に驚く暇さえなかった。
苦いはずなのに、それはまるで砂糖の様に甘かった。


end