いつも遠くから見つめるだけ。
彼の明るく太陽みたいな笑顔を近くで見れる訳もなく私は遠くから見つめるだけだ。


「ねぇ、まさし!次の日曜日デートしようよ。あたし映画観たいんだぁ。」


可愛らしい声の主は前を歩く私の想い人の彼女だ。
皮肉なことに通学路が一緒な私は彼とその彼女のラブラブシーンを見なければならない。たまたま今日は2人と時間帯が重なったのだ。


「映画も良いけど、ちょっとマック寄っていいか?腹減ってさ。」

「うん、良いよー。・・・ねぇ、まさしぃ、して?」


彼女は甘えた口調で彼の制服の袖を引っ張った。
彼はそれに応え、そっと彼女の肩を引き寄せた。
2人の足が止まり、その後ろにいる私も思わず足を止めてしまう。


「夢乃・・・。」


彼が優しく色っぽい口調で彼女の名前を呼ぶと2人の唇が重なった。
それはまるで壊れ物を扱うかのように彼は優しく何度も何度も口づけを交わしていた。

もしも私が彼女だったら、同じように唇を重ねてくれるだろうか。
もし私が彼女だったら、こんな辛い思いはしなかっただろう。
私だってヒロインが良かったんだ。


end