好きな人・・・?
そんな人は、いない。

愛してる人・・・?
そんな人がいるはずない。

気になる人・・・?
・・・・いる。


「野中くん、消しゴム落ちたよ?」


そう言って床に落ちた俺の小さい消しゴムを拾う隣の席の小田。


「あー、ありがと。」


軽くお礼を言って隣の席の俺等の会話・・・・終了。
なんとも隣の席とは思えない程の会話の少なさに泣けてくる。


好きでもない、愛してもない。
ただ気になるだけだ。
そう、ただ・・・気になるだけ。


「おい、野中!知ってたか?小田って気になる奴がしるらしいぞ!」


休み時間に異常なテンションで話しかけてくるのは俺の友達だ。


「へぇー。」


興味のない振りをして平然を装った。
無愛想な俺の言葉の裏には焦りがあった。


・・・―


「小田って気になる奴がいるんだ?」


実を言うと気になる俺は授業中に聞いてみた。小田の答えに不安が隠しきれない。


「うっ、うん。」

「誰?」

「は、恥ずかしいから紙に書いて渡すね・・・!」


小田はノートの端を小さくちぎって、その紙に気になる奴の名前を書き始めた。


俺に教えてくれるって事は俺じゃねぇじゃん。
あーあ。イキナリ失恋かよ。
いや、でも失恋と言うには早すぎる。

だって気になるだけなんだから。
そんな俺をお構い無しに小田は俺に照れくさそうな笑顔で紙を差し出した。


「はっ、はい・・・!」


四つ折りにされた小さい紙を受け取り紙を開いた。
開くごとに俺の左胸の奥がドクンと鼓動を大きくする。


「・・・えっ・・・マジで?!」


紙を見て俺が驚くのもおかしくない。
だって紙には可愛らしい字で“野中くん”と書かれてあったんだから。



「実は・・・俺もなんだけど。」

「ほ、本当に・・・?!」

「俺の気になる人も小田だよ。」


もう、こんなセリフは恥ずかしすぎて一生言わない。
だけど・・・小田は特別だ。
俺の気になる人・・・だから。

end