「杏、ゴメン!俺さぁ放課後に部活あるから一緒帰れない!マジでゴメン!」


悲しい顔をして謝ってくる直哉に笑顔で「いいよ」と返事を返す。

でもね本当は“いいよ”なんて思っているはずがない。
だけどね、私は嫌われたくないから嘘をつくんだ。

それに部活なんかない事を私は良く知っているんだ。
部活に入ってた?前、退部したって聞いたよ。
直哉ってば嘘つくの下手だなぁ。

あんな事を言い訳にして他の女の子と帰っているんだよね。
いつもいつも違う女の子を連れている。
それでもバレていないって直哉は思っているんでしょう?

私は、初めから知ってるよ。

彼氏の浮気を気づいていない振りをして付き合い続けるのって卑怯?
私って、卑怯な人間なのかな。

でも、それでも君が好きなの。


「マジ杏の事、大好き!」


一緒に帰る日は何度も私に言ってくれる。

他の女の子にも甘い言葉を口にして、その言葉が嘘だとわかっていても信じてしまうんだ。


決して甘い言葉1つで私の不安は無くなる訳ではない。
だけど信じる事はできるんだ。



だって・・・
それでも君が好きだから-
君しか考えられないから。

そして私は今日もあなたの甘い言葉に騙されるんだ。


end