・・・―


「じゃあ、その中谷って奴と俺を間違えたって事か。」

「・・・はい。」

「そんで告白して来て、挙げ句の果てにはキスまでした訳ね。」

「はい。本当に申し訳ありません。」


近くの喫茶店で事情を話して15分、ようやく納得した様に大谷くんは頷いた。
納得した大谷くんを見ると私は安心して、ホッとした。


「よしっ!気に入った。ホントに俺と付き合うか?」

「え、あの。あたしは中谷くんが・・・好き、なので。」

「その中谷って奴の事、本当に好きなんか?さっきの話を聞くと、ただ憧れてる様に思ったけど。」


憧れ、か。

確かにあたしにとっては中谷くんは憧れの存在だ。
だけど好きな気持ちは恋だと思う。というより思いたい。


「憧れだけで好きと思ってるんやったら大間違いだぞ?お前の好きは憧れだろ。良く考えてみろ。」


なんでだろう、大谷くんから言われると何故かそう思ってしまう。
いや、上手く丸め込まれている気がするが・・・そこは気にしないでおこう。


「なんか憧れてるだけかもって、思って来た。」

「だろ?だから俺と付き合おう。さっきのキスで惚れたわ、お前に。」


笑顔で言う大谷くんに不覚にもあたしの心臓はドキンと音を立て、顔が真夏の太陽を浴びているかの様に熱くなった。


もしかしたら、これが本当の恋なのかもしれない。


「・・・よろしくお願いします!」

「マジでか?よろしくな、俺は大谷純。お前は?」

「あ、あたしは竹山七海!」


勘違いから始まった恋でも良い。
これから大谷くんとは仲を深めていけば良い。
よくわからないけれど、この人に運命っていうものを感じてしまった。

こういうのを“運命的な出会い”と言うのかな。


end