ある日の放課後、僕が迷い込んだ先は草が青々と茂り、花が一面と広がる裏庭だった。
そして、その花畑とも言える様な場所で1人の少女が綺麗な瞳をさせて花を見つめている。

この学園にこんな綺麗な子がいただろうか。
少なくとも僕は今日初めてみる顔だった。その華やかさ、美しさに見惚れてしまう。

この私立白王学園はお金持ち、いわゆるお嬢様とお坊ちゃまが通う学校だ。とは言うもの僕はそんな大それた家柄ではなない。
そこでどうして僕が学園にいられるかと言うと、学年トップで入学し卒業まで首位をキープするという条件で奨学金を免除してもらっているからだ。


「あら、あなたは?」


立ち尽くす僕に気づいた少女が優しい笑顔を向け尋ねて来た。とても綺麗に笑う子だなぁ。何だか自然と心が温まる。


「僕はただ・・・その道に迷ってしまって。まだこの学園に慣れてないんです。」


苦笑いを浮かべると、そんな僕を見てクスクスと笑う少女。
そんな姿さえ美しく見えるのは周りの花達のせいだろうか。


「きっと早く慣れるわ。ここは綺麗な場所でしょう?お気に入りの場所なの。あまり人も来ないからゆっくりできるのよ。」

「そうなんですか。確かに、とても綺麗な場所ですね。癒されます。」

「そうでしょう?ここのお花達を見ていると自然と笑顔になれるの。」


僕は思った。
この少女は花よりも美しく優しい心を持っているのだと。