「亮介ー、帰ろう!」

「おー、ちょっと待て。」


彼氏の亮介は私にはもったいないくらいの良い男だ。
本当にこの人に恋をして良かったなと思っている。


「亮介、早くしてよー?寒いんだから!」


そう、ここは下駄箱。
ピューと外から冷たい風が入る。前まで暑かったというのに気づけばこの寒さだ。本当に季節の移り変わりというのは早いものだ。


「はいはい。ちょっと待てって。もう少しで、できそう!」


それはそうと亮介は先程から何をしているのかと言うと、靴ヒモと悪戦苦闘中なのだ。
靴ヒモが絡まってしまったらしく、必死に靴ヒモと闘っている。


「あ、できたー!できたぞ!よっし、帰るか。」

「本当?良かったね。」


「ん。」と言って差し出してくれる手に自分の手を重ねる。亮介の手は温かくて冷たい手の私には羨ましいぐらいだ。


「寒いなー。美里、風邪引くなよー。」

「亮介こそ。風邪引いちゃダメだよ。」

「んー、どうだろ。風邪引きたいかも。」

「どうして?」


そう尋ねるとチラリと横目で私を見てボソッと呟いた。


「美里に・・・看病、してもらいたいから。」

「・・・あはは!亮介ってば馬鹿だー!」


笑ってしまう。
これは笑うしかないだろう。


「な、そんなに笑うなって!恥ずかしいだろ・・・!」

「じゃあ、私も亮介には風邪引いてもらいたいなぁ。」

「はぁ?」


だって、だってさ。
そんな可愛い事言われたら看病したくなるでしょう?


「亮介が風邪引いた時は、家に行ってお粥作って私が食べさせてあげる!」

「お、おう。」


そして頬を真っ赤に染める亮介の頬に寒い日の魔法をかけた。


end