桜の花

ああ、よかった。

そして視線を拾ってくれた人へ移すと…
「わっ!!あ、あり、、ありがとうございまし!!!」

すっごくびっくりしたから、
思わず声が裏返ってしまった。
しかも、「し」じゃなくて「す」だし…

「あ、いえいえ。これ、どっかで見たことあんな~って思ってたら、前でこの話してる2人がいたから…ね?」
「本当にありがとう!!!」
少し微笑んで、そそくさと由乃のところへ戻った。
なんでびっくりしたかって??
それは…
学年でも噂のかっこいい子だったから。
あたしも〈かっこいい〉って思ってた女の子のうちの一人。
まあ、こんなに焦る必要ないんだけど。

「ちょっと亜莉奈!!あれ…益田君じゃないっ?!!」
「だよねっ?!あたし超ビックリしたんだけど!」
「家こっちなんだね~」
「ねー!やっぱかっこいいね☆」
「も~ヤバいっ!!!」
こんなこと話してると、学校に着くのはすぐ。
由乃と別れて、あたしは自分の教室へはいる。
いつものように、みんなグループごとに別れて話している。
「おはよぉ✿」
「おはよ!」
「さっきさあ、学校来る途中で益田君と話しちゃったぁ…」
「えっ?!!うそぉ~…亜莉奈だけずるいっ!」
「えへへ~」
「何その顔!!何話したか言いなさいっ!!」
「きゃ、ちょっと美優!痛いってば!!!」
「ちゃんと言わないと離さないもんね!」
「わかったから、言うから!!」
美優はその言葉を聞くと、パッと手を離して、
「で?何?何言ってたの?益田君は!」
「えっとね、あたしがこれ落として、拾ってくれたの。…それだけ。」
あたしはピンクのケアベアを指して言った。
「なんだぁ~…で、それだけ?!」
「うん、それだけ。」
「つまんなすぎ!!超つまんないから!!」
「え、でも話せたことって奇跡に近いでしょ?!」
「まあそーだけどさあ…」
「あ、予鈴なった!」

あたしたちはそのまま席に着いた。
先生が出席を取ってる間、こっそりケータイを開いた。
【メール1件】
開いてみると、知らないアドレス。
誰だろう…
────え?
な、なんでっ?!
そこには…
〈さっき、キーホルダー落としてた子だよね?益田光樹です。〉
なんでメアド知ってんの?!