清水は、慌てて手を伸ばし、小さな彼女を抱き寄せた。

何があっても――目の前で人が殺されようが、自分の首が絞められようが――絶対に泣かない子が、たかが伝説一つを信じてこんなに号泣するなんて、信じられなかった。

『都さん。大丈夫ですから』

それはもう、火がついたように号泣を続けている。
だから、それからしばらくして帰ってきた大雅が目を丸くしたのも無理は無い。

『何があった?』

咎めるような口調で清水に言うと、号泣している都を自分の腕へと抱き寄せる。

『七夕が雨なのが耐えられないそうです』

清水は、他に説明のしようもなくて。
声から全ての感情を取り払ってからそう答えた。

大雅はほっと息を吐いて、彼女を強く抱きしめる。

『大丈夫ですよ、都さん。
 雨が降るのは雲の下。
 星はずーっと上の方にあるんですから、ね?』

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