苺祭的遊戯(ショートストーリー集)

とはいえ。
夕食の時間には確実にパパに捕まるわけで。

「清水ー、お姫様がラブレターを渡してくれないんだけどーっ」

パパは、わざと甘えた声で、わたしの目の前で清水に声を掛けている。

「だってラブレターなんて書いてないもの。
 書いてないものは、渡せないわ。
 そうでしょう?」

わたしはすっとぼけたまま、言葉を返す。
視線が合った清水は僅かに瞳を細めた。

わけあって、わたしのクラスの担任を受け持っている清水は、同時にヤクザの屋敷で私の執事として暮らしていた。

学校では表情豊かな清水も、ここではほとんど無表情。
それでも、その僅かな表情の動きが読み取れるのは、わたしが彼に心惹かれているせいなのだ。

ドキン、と、心臓が跳ねる。

「そうですねぇ。
 書いてないものは渡せませんね。
 私から、お渡ししましょうか?」

……ひどい。
わたしはこんなに清水が好きだって言うのに、清水は全面的にパパの味方なんだから。

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