「久しぶり、都ちゃんっ」

玄関先で出会ったのは、まるでガウンを思わせるような紫のコートを、何故か上品に着こなしているパパだった。

靴が赤のエナメルってのも、どうかと思う。

「……パパ?」

わたしは訝しげに眉を潜めた。
ほんの一瞬。

パパは、犬の気持ちを微塵も考えない飼い主さながらに、わたしをその肌触りの良い(でも色は最悪の)コートに抱き寄せ、わしゃわしゃと頭を撫でる。

「日本人はこう、照れ屋だから良くないよなー」

……パパも、日本人ですよね? ね?

わたしの嫌がる様子など歯牙にもかけずに、アメリカ映画さながらに、右頬、左頬に、音を立てたキスを落としていく。

……はぁ。

それだけで、わたしはすっかり疲れてしまった。

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