「都だよ」

心配させてはいけないと想い、自分の名前を告げてから、しばらく立ち入ってなかった大雅の部屋へと脚を踏み入れた。

ベッドに横になっている大雅の頭には、氷嚢が載っていた。

私は思わず手を伸ばす。
その、手を。
素早く掴んだのは大雅だった。

「……ごめんなさい、起こした?」

「ああ、都さん」

私だと気づき、熱っぽい顔でそれでも大雅は笑ってくれた。
瞳が潤んでいる。

「移したくないから、外に出ていただけますか?」

「……看病、しちゃだめ?」

だって、こんなに苦しそうなのに。放っておけないよ。

「薬も飲んだし。後は、寝ていれば治ります」

「だったら、私が傍に居る」

大雅は困った顔で、苦笑して、ふわり、と、私の頭を撫でた。

「是非、元気なときにきていただけませんか?
今は、キスも出来ないじゃないですか」

「し、しなくていいわよっ」

どきりとして、思わず唇を押さえてしまう。

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