御所を後にして、牛車に乗り込む。

「龍は、本当に帝のことがお嫌いなのね」

毬はなんでもないことのようにさらりと言った。

……そんなにさらりと言わないで欲しいのに。
龍星はふぅとため息を吐く。

「……俺の前では、あの男はことさらに冷たいんだ」

「えー。
 龍だって、彼の前では冷たいわよ?」

にこりと笑う毬に、それでも心配はかけたくない。

龍星は全てを飲み込むと、整った顔に甘い笑顔を浮かべた。

「では、ここでは特別温かくしなくては」

言うと毬を抱き寄せる。


ずっとこの手を離したくない。
龍星は心の中で強く、そう、念じずにはいられなかった。


Fin.