私はブーツを脱ぎ、白い砂浜に素足で立ちながらも、ため息をつかずにはいられない。

「いいじゃん。ここ。
ラスベガスほどじゃないけど、なかなかのリゾート地だよ」

そうでしょうとも!
カンクンは、世界屈指のリゾート地だし。
温かいし。
海は綺麗だし。

でも、でもね?

唐突に砂浜の真ん中に、冬服で立ち尽くした私たち、かなり変よ?

必死でアピールすべく睨んでいると、キョウは海から私に目を移し、極上の笑みを浮かべる。

「とりあえず、ホテルに水着でも調達に行きましょうか?
お姫様」

……文句を言う前に、差し出された手を掴んでしまうのは、もう。
パブロフの犬すら、越えてしまったのではないかと。

時折不安になってしまうのだ。

私の不安を余所に、カリブの海は暖かく笑っていた。

Fin.