「あー、龍っ」

毬は起き上がると、ぎゅうとしがみついてきた。

「勝手に抜け出したら心配するだろう?」

龍星はそう言うと、華奢な姫を抱きしめて、接吻を落とす。

毬はくすぐったそうに笑うと、龍星の手を引っ張って、桜の絨毯に寝転ぶように強要した。

「ねー、すっごく綺麗でしょーっ」

「……本当に」

姫のすることじゃない、と、説教しようと思ったその気さえも失せるような、見事な色合いだった。

薄曇の空と、淡い桜色。


「龍、ありがとう」

唐突に、隣から小さな声。

連れて来てくれたことへの感謝なのか、それとも、もっと大きなことへの感謝なのか。

「どういたしまして」

龍星はあえて問わず、ただ、返事をする。
そうして。

桜の絨毯に寝そべったまま、思い切り愛しい人を腕の中へと抱き寄せた。

Fin.