「そんなわけないでしょー。もう、いい、私が……」

食べる、と。
ホットケーキとはいいがたい代物にフライ返しをあてようとしたら、後ろから抱き寄せられた。

……つい、今しがた目の前に居てお話してませんでしたっけ?

「いいから、座ってて?
ついでに言うと、ホットケーキにはベーキングパウダーと砂糖も入れるといいんじゃないかな?」

耳元に届くのはからかいを含んだ、低く甘い声。

いたずらに頭に落とされる軽いキス。

「……はぁい」

私は反論も思いつかず、キッチンを明け渡す。

こうして、今朝も、キョウに私の手料理を食べさせる、という小さなミッションは失敗に終わったのだった。

Fin.