苺祭的遊戯(ショートストーリー集)

ヒコは唐突に起き上がると、その広い胸に唐突に私を抱き寄せた。

「……おはよ、ルナちゃん」

る、ルナちゃんじゃありませんけど、私。
ルナちゃんっていうのは、きっと晴菜ちゃんの愛称よね?

まーって、今、頭にキスしようとしてますよねっ。
放せーっ。

私は必死に腕の中でもがく。

「ヒコっ」

私は僅か声を荒げる。
晴菜ちゃんは、「ヒコ」って呼んでないはずだもの。
寝ぼけていたって気づくべきだわ。

「何、彩ちゃん。
 あんまり騒ぐと、皆が見るよ?」

次に耳元を擽ったのは、寝ぼけてないしっかりした声。

どきり、と。
心臓が鷲掴みにされた、気さえする。

「……っ」

私は渾身の力を振り絞って、胸から顔をあげる。
挑発的な眼差しにぶつかって、どきりとする。

「耕介が、バーベキューの準備するのに手伝えって、探してたよ?」

私は動揺を飲み込んで、普通に伝える。

ヒコは形の良い唇の端をあげた。

「そう。
じゃあ、俺からも伝言。
アヤにね。
男を起こすのにそんな格好じゃ襲われるよ? 気をつけて」

「……海で寝てんじゃないわよっ」

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